2012/02/26 | | By: Atsushi Sawa

大学スポーツ


※この記事は2011年11月11日にWorld Sports Todayに投稿されたCollage Sportsの日本語版である。


写真: The Ticket Chest
日本でも、箱根駅伝といった人気のある大学スポーツはいくつか存在するが、アメリカにおけるNCAAバスケットボールトーナメントほどの国民を熱狂させるような大学スポーツは存在しないのではないだろうか。バスケットボール好きで有名なオバマ大統領もどのチームが優勝するかを予想するほど、この大会は国民的な催し物となっている。


日本では大学スポーツよりも、歴史の深い全国高校野球選手権大会をはじめとした、高校スポーツの方がより人気のあるように思われる。

長い歴史のある野球以外にも、今ではバスケットボールやサッカーを筆頭に、日本では様々なスポーツが行われているが、サッカーの国際試合を除くと、日本中が熱狂するようなプロリーグやアマチュア大会が日本国内ではほとんど存在しない。

NCAAバスケットボールトーナメントのようなモデルを日本の大学スポーツに取り入れることによって、スポーツ普及を促進、若い選手の育成、そして地元経済への貢献ができるのではないだろうか。いくつかの記事を参考に、NCAAバスケットボールトーナメントの善し悪しを考えていきたい。



Pop History Gigによると、2009年のNCAAバスケットボールトーナメント"ファイナル4(final four)"の主催者はこの大会が開催地デトロイトにおいて、およそ3〜4千万ドルの経済効果を生み出すことができると想定した。実際、この大会は最初の2日間で72,000人のファンがデトロイトを訪れている。このように全国的に人気のある大会は、全国からのファンの動員によって地元経済を活性化させることができる。



NCAAバスケットボールトーナメントはアメリカにおけるスポーツ大会の中で2番目に広告売り上げが高い大会である。全米TV放送局のCBSは、2010年大会の広告枠の売り上げが6億1380万ドルに達している。この広告売上高を上回る大会はNFLのプレイオフの7億9380万ドルのみで、NBAやMLBのプレイオフとNCAAトーナメントの差は2億ドル以上である。

NCAAバスケットボールトーナメントの決勝戦および準決勝戦における、30秒間のテレビコマーシャルの放映にかかる費用は120万ドル。一方で、MLBワールドシリーズにおけるコマーシャルの放映料は40万ドルである。

Smart Moneyはこの放映料の差はNCAAトーナメントとワールドシリーズの試合構造の差から生じているものだと説明する。

ワールドシリーズは各チームの本拠地に置いて対戦するため、チケットの売り上げは、各チームのファンの規模によって左右される。しかし、NCAAトーナメントでは全米からチームが集まるので、この大会は常に全米中のファンが注目する大会となるのである。

その他の理由として、NCAAトーナメントは一試合によって勝敗が決定するのに対し、MLBは4試合先取という方式を採用しているため、NCAAの方がいっそう一試合における緊迫感があり、好まれると考えることができる。



一方で、NCAAトーナメントにもいくつかの改善点も存在する。

まず、限られた大学のスポーツプログラムだけが、黒字経営を続けることができれいるという点である。ほとんどの大学が学内のスポーツプログラムの状態を高水準に保つ為の高額投資により、財政を悪化させている。

写真: Foebes.com
また、コーチ陣への報酬もチームを運営していく上での問題となっている。NBA、ロサンゼルス・レイカーズのフィル・ジャクソン監督がチームの収入の2%を報酬として受け取っているのに対し、いくつかの大学の監督はチーム収入の5%を受け取っている。Forbesに取り上げられたように、監督はチームを代表してはいるが、NBAの監督よりも少ない労働時間で多大な報酬を巻き上げている。



NCAAバスケットボールトーナメントは確かに膨大な経済効果を生み出すことができる。しかし、その人気ゆえ、チーム運営費用も年々増加している。

NCAAトーナメントのシステムを日本で取り入れるのであれば、先に挙げたような問題を解決しなければならない。特に日本の大学は財政状況が豊かな学校ばかりではないので、大会収入の分配方法も工夫しなければならない。NFLのように、大会側でテレビ放映の収入を管理し、均等に参加チームに分配するというのも一つの方法であろう。

日本の大学スポーツを発展させていく為にも、NCAAトーナメントの組織構造のみならず、日本のスポーツ界の動向にも引き続き調査していきたい。

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