2011/11/05 | | By: Atsushi Sawa

ユニフォームへの企業広告

ユニフォームを広告スペースとして企業に売ることは、スポーツチームにおける重要な収入増加の戦略の一つである。Advertising Ageに掲載された記事によると、イングランド・プレミアリーグにおける20チームのユニフォームのスポンサー料の合計が2010年のシーズンだけで1.55億ドルである。各チームによって獲得している金額は異なるが、リバプールとマンチェスター・ユナイテッドが総スポンサー料の40%を獲得し、各チーム3,000万ドル以上のスポンサー収入を得ている。一方で7チームは100万ドルにも満たないスポンサー収入しか得ることができず、イングランド・プレミアリーグでは、人気のあるチームだけがより高額な収入を得ることができるという構造になっている。



アメリカのスポーツにおいてNASCARはスポンサー収入に成功した代表的な例である。NASCARにおける1チームあたりの費用は年間で最低でも1,500万ドルかかり、チケットの売り上げや関連商品の販売だけでは到底これだけの費用を補うことができない。そこで、NASCARは車体に広告を載せるというスポンサー契約によって必要な予算を集めている。スポンサーには大きく分けて3種類あり、メインスポンサー(Primary Sponsor)、メジャースポンサー(Major Sponsor)、アソシエイトスポンサー(Associate Sponsor)に分けられる。アソシエイトスポンサーは年間50万から200万ドルで車体のロッカーパネルやクォーターパネルの下の方に広告を載せることができる。メジャースポンサーは200万から500万ドルでリアパネルやユニフォームに広告を載せる。そしてメインスポンサーは1000万から2000万ドルでボンネット全体や車体、およびユニフォームや関連商品に広告を載せることができるほか、チームの色も企業に合わせたものを採用させることができる。チームによってより多くの広告スペースを売ることで、より多くの収入を稼いでいる。

しかし、アメリカの4大スポーツリーグであるNBA、NFL、NHL、MLBのいずれのいずれのリーグもユニフォームに企業広告を載せていない。これはこの4リーグが広告を載せることに対して興味を持っていないという訳ではなく、いくつかのリーグでは広告をユニフォームに載せることに対して前向きに検討している。女子プロバスケットボールリーグであるWNBAやNBAの下部組織であるNBA・Dリーグにおいてはユニフォームに企業広告を載せている。またNFLにおいても練習用のユニフォームには企業広告を掲載している。NBAとNFLは企業広告を本シーズンのユニフォームに載せるとどのような効果が出てくるかを探っている。過去に一度、MLBがユニフォームのスポンサー権を売ろうと試みたが、ファンからの批判の声が多く、実現にはいたらなかった。

Advertising Ageに掲載されていた他の記事によると、アメリカのプロスポーツはユニフォームに企業広告を載せることによって3.7億ドル以上の収入を生み出すことができるという。この記事にはアメリカ4大スポーツの各リーグにおける広告収入の見込み高のトップ3を掲載している。NFLは各リーグ均等に1,400万ドルを広告収入で得ることができる。MLBの一位はニューヨーク・ヤンキースで1,380万ドル、NBAがロサンゼルス・レイカーズで400万ドル、NHLではシカゴ・ブラックホークスが137万ドルの広告収入を上げることができると予想されている。前回の記事で述べた通り、NFLはリーグ全体での成長を目指しているので、32チームの全てが同額の広告収入を得ることができると予想されている。

国内だけでなく世界からも注目されているアメリカのプロスポーツのユニフォームに自社の広告を載せたいと考えている企業は少なくないだろう。そして、チームにとっても広告収入は有益な収入源となるだろう。しかしMLBのファンと同様に、ほとんどのファンがユニフォームを「きれい」な状態で残しておきたいと考えているので、広告がこれらのスポーツリーグのユニフォームに掲載される実現性は低いだろう。

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